STELLA

好きが君だけで溢れかえるまで

人間の裏の顔〜BACK COAT裏裁判〜

こんにちはこんばんは。

 

 

 

 

舞台「BACK COAT〜裏裁判〜」のお話です。

推し女優さんが出演されていて、わたしはなかなかタイミングが合わずその女優さんの舞台全然観に行けてなかったので、今回ちょうど行けるから行こうかな〜くらいの軽い気持ちでチケットを取りました。いや、もう、ちょっと後悔したもんね…。ものすごい作品でした。役者の熱量と、ストーリーの重さと、色々なことが相まって、なんとも表現できない感情になった。もっと観たかったけど、もう観たくないとも思える。推し出て欲しかったなあ()

ちなみに一部WキャストでわたしはBチームの方を観劇しました。Aチームも観たかった…。

 

 

あらすじ

とある事件に関する裁判が行われた。
犯人に下された判決は、無罪。
納得のいかない遺族は、バックコートという組織に新たに裁判を依頼。
そして集められた新たな裁判員たちにより、裏裁判が行われる。
裏裁判には三つのルールが存在する。

一つ、裁判員は犯人含む事件に関わる人間で構成されること。
二つ、判決は死罪か無罪かの二択のみ。
三つ、判決はその場で即刻実行される。たとえ、犯人ではなくても。

生死を賭けた裁判が今、開廷される。

 

出演

倉貫匡弘 / 瀬戸啓太(A) / 堂本翔平(B) / 田中稔彦(A) / 輝海(B) / 有馬綾香 / 倉持聖菜 / 矢島八雲 / 羽鳥翔太 / 創木希美 / 岡部直弥 / 中島一博 / 町田恵理子(A) / 茶谷優歩(B) / 中川絵美 / 才勝

(敬称略)

 

 

ストーリー

主人公(サク)の妹(リン)が首を吊って死んだ。その場に居合わせた家庭教師はリンを止めなかった、として裁判にかけられたが証拠不十分で無罪となっていた。その1年後、サクはバックコートという組織に裏裁判を依頼。バックコートは、サク、サクの友人タツヤ、家庭教師、家政婦、花屋の女性、配達員、家庭教師の裁判を行った裁判長、家庭教師の弁護士、飲み屋の店員などといったサクとリンに関わりのある人物たちを集め裏裁判を開廷する。

開廷後、まずバックコートは第一の判決を取る。「家庭教師が有罪だと思う人は挙手を」最初に家庭教師が自ら手を挙げ、他の人もぽつりぽつりと手を挙げていく。手を挙げなかったのはサクとタツヤ。*1家庭教師が無罪だったことに納得が出来ないがための裏裁判ではなかったのか。そう喚く裁判員たちにサクは「自分が旅行に行き不在だった間に、リンが何故死んだのか、その日何が起きたのか、それが知りたい」と話す。

 

ひたすら謝る家庭教師。早く裁判を終わらせたい裁判員たち。死刑となった場合その場で即刻執行されると聞き動揺する裁判員たち。なかなか話が進まない中で、リンが死んだ時の再現をしよう、という流れになる。そうしていく中でどんどん隠していた顔が現れる裁判員たち。

髪をひとつにまとめていて大人しい女性と見えていた家庭教師は、髪をほどき水を一気飲みしペットボトルをテーブルに叩きつけ「ええ、死ぬところずっと見ていましたよ。憎んでましたから、リンさんのこと」と冷たく言い放つ。サクにとって可愛い妹だったリンは、サクの躾が厳しくなっていったこととともにサク以外の人物に対して非常に凶暴な一面を表出していた。暴力、暴言、脅し、それによって疲弊していた家庭教師、家政婦、花屋の店員、配達員はリンを殺そうと目論む。弁護士たちも実はそれに協力しようとしており、どんどん裏の顔が暴かれていく。そして皆、「自分だけが悪いんじゃない」「有罪にはしないでくれ」と泣き叫び喚き散らす。

 

そして、サクの友人のタツヤ。「俺はお前の挙げた方に挙げる」「昔いじめられてた俺を助けてくれたから」とサクの味方をしていたが、これもまた裏の顔が暴かれる。リンの「兄が大好きで、幸せになってほしい」という想いと、ほんの少しだけあった悪を利用し唆して、前述の4人に対する凶暴性を発現させたり、リンに首吊りゲームを提案したりしていた。それは恵まれた環境にいるサクへの羨望、理不尽さ、一度自分を忘れていたことへの悲しみ、憎しみからきているものだった。でも、それでも、本当にリンが死んでしまうなんて思わなかった…と、暴かれた裏の顔のそのまた裏にある感情。

 

実はリンは自殺だった。サク宛に遺書を書いており、サクはリンが自殺だったことを知っていた。リンに関わった人すべての真実を知り、サクは自分が有罪だ、と話し刑が執行される。

 

 

といったクソクソクソ重い話でした。ワンシチュエーションの会話劇、だったはずなんですけど、1人1人裏の顔が暴かれていく中で掴み合い、突き飛ばし、衝突し、で全然「会話」劇じゃなかったです(笑)終演後の面会で推し女優さんも「会話劇ってなんだろうね…(笑)」と言っていました(笑)公演中、壁に激突して顔が腫れて冷やしながら帰った日もあったそうです…。これを1日3回まわしするのしんどすぎるでしょうよ…。

 

もう少し踏み込んだ感想も。

 

サクについて

サクはリンが自殺だったことは知っていた。けど、リンの凶暴性については全く知らなかった。そして、その凶暴性を自分が生み出してしまっていたことも。

度々、回想シーンが入るんですが、その中でのサクとリンって本当に可愛らしい兄妹なんですよね。サクはリンのことが好きで、リンもサクのことが好きで。大好きなのに、ほんの少しずつ間違っていってしまった。お互いに、そして周囲も、ちょっとだけ話をすればこんなことはきっと起こらなかった。

サクは最初からこの裏裁判で死にたかったんだろう。リンの遺書には「お兄ちゃんが幸せになってほしいからそのために離れる。」とあった。「うちがいるとお兄ちゃんが幸せになれないから。」とも。でも今のサクの幸せはきっとリンと暮らしていくことだったんだろう。

サクは倉貫匡弘さんが演じていらっしゃったんですけど、倉貫さんめちゃくちゃほの暗いお芝居合いませんか????明るさの中にほの暗さを含んだお芝居がめちゃくちゃうまいなあといつも思っていたんですけど、今回のサクもほの暗くて、何を考えてるのかよくわからないそんな役だったんですけど、本当にぴったりでした…。それにしてもわたしが倉貫さん観たの、club SLAZY、艶漢、BACK COATと全部ほの暗いお兄ちゃんだ…(笑)

 

リンについて

倉持聖菜ちゃん演じるリンちゃん、本当にすごかったんですよ。先程も書いたように、サクとの回想シーンでは可愛らしい兄妹で、お兄ちゃんのことが大好きな可愛い妹。一方、家庭教師には弁護士との不倫について脅し、家政婦には家政婦が大切にしている父の写真を破り捨て頬をひっぱたき、サクに好意を抱いている花屋の店員には掴みかかり「お兄ちゃんはお前みたいなケバい女好きじゃないから」と言い捨て、配達員には荷物を踏み潰し無免許運転について脅す。可愛い妹と暴力的な子供とのギャップが凄すぎて怯えるほどでした。「お前の席ねーから!」レベルの(古い)言い捨てぶりで本当すごかった…。

リンは本当にお兄ちゃんが大好きで、お兄ちゃんに幸せになってほしくて、でもどうしたらいいのかわからなくて、お兄ちゃんを独占したくて、自分の中の暴力的な部分を自分でもどうにもできなくて、それをお兄ちゃんに知られたくなくて…とずっと悩んで悩んで悩んで、お兄ちゃんのためにできる最後のこと、それが自殺だったんですね。サクのところでも書いたんだけど、やっぱりリンもちょっとだけ勇気を出して話していれば、こうはならなかったんだろうなあ。

 

タツヤについて

「保育園の時に仲良かったのに、次再会した時俺のことを忘れてたから」ってそんな理由で憎む!?!???!っていう気持ちもあったのですが(笑)まぁタツヤは恵まれない環境で育ってきて、苦しみながら生きてきたっていうのもあるからなんでしょうか。ちょっとこの理由だけはスっと入ってこなかったんですけど、憎みながらもサクとリンと仲良くしていく中で、憎しみだけではない感情も生まれていて。リンの凶暴性を助長するよう唆してはいたけども、リンが自殺するきっかけを作ってしまったことを悔やんだり、そもそも忘れられてて悲しかったというのはそれだけサクのことが好きだったからですよね。サクもリンもタツヤもみんな結局すれ違ってばかりだったんだなあ。

タツヤはWキャストで、わたしは堂本翔平くんで観たんですけど、タツヤの裏の顔が暴かれていく中で、タツヤ笑ってるんですよね。面白くておかしくて仕方ないっていう笑い方で。そこからのタツヤの怒涛の告白が本当にすごくて。もはや狂気。周囲を嘲笑って、でもきっと自分で自分を一番嘲笑っていて。本当にすごかったという言葉しか出ない。

もう片方のチームの瀬戸啓太くんも観たかったですね…。

 

最後に

本当に重くて苦しい作品でした。誰しも裏の顔があって、それが暴かれていく瞬間、人間の本質が見える。何度も言うけどこれ3回まわしは絶対演じる方も観る方も辛いから辞めてあげてほしい…(笑)

その日、その時、感じるままに動け、と演出家さんに言われていたようなので各回全て違っていたんだと思います。やっぱりもっと観たかったなぁ、いや、観たくなかったなぁ、を繰り返しています。でも観れて良かった。何度も観たことのある役者が多かったんですけど、また違う一面も観れたと思います。それも裏の顔かな。

DVD化されないのが残念ですが、きっと映像で観てもこの作品の魅力は半減されてしまうんだろうな。とにもかくにも、お疲れ様でした。

 

 

 

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*1:タツヤは裁判が始まる前に、「俺は何があってもサクと同じ方に挙げる」と話していた。