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人はどうすれば人を救えるのか〜メサイア月詠乃刻

こんにちはこんばんは。

 

 

 

メサイア月詠乃刻。絶望を味わったGロッソで再び絶望に陥るとは。しかし月詠は鋼をやったGロッソでやることに意味がある。本当にしんどい。

 

 

 

以下、ネタバレしまくっているので伏せます。

 

 

 

 

生きる

死ぬ

たった一人の神になる

 

 

本当にその通りで、生きて、死んで、たった一人の神になった。

 

 

ストーリー

南トランでサクラの任務をこなしていた加々美。彼の元にナイトメア(悪夢)を名乗る人物が現れ、「有賀涼を拘束した。助けたければ命令に従え。」と言い、ナイトメアからの指示を聞くためにチップを埋め込むよう指示される。有賀を助けるため指示通りに動く加々美。そして、日本では国家要人連続自殺事件が発生していた。その鍵を握っているのは大日本共新製薬。小暮が元いた製薬会社である。そこに絡んでくる宗教団体、照る日の杜。柚木、御池が所属していた団体。

照る日の杜と大日本共新製薬は裏で手を組みミコトノリプロジェクトを進めていた。ミコトノリプロジェクトとは、免疫関与を利用し、親免疫細胞を持つ者が子免疫細胞を持つ者をマインドコントロールできるようにするもの。それを利用し、照る日の杜は神の国を作ろうとしていた。

 

 

 

加々美いつきについて

最初に月詠の情報が出た時、果たして加々美いつきが戻ってくる必要はあるのか?と思った。初めて卒業後のサクラが主演となる舞台。しかもメサイア不在でたった1人で。

鋼ノ章で、Gロッソで、志倉さんに連れられて「メサイアなんかいらない。1人でいい。」って言っていたいつきが、メサイアを助けるために再び1人で帰ってきた。きっとこれはとても意味があることで、月詠乃刻はGロッソでやらなければならなかったんだと思う。初登場の鋼から色々な経験を経て成長したいつきはものすごくサクラだった。チャーチを卒業したサクラ自身にスポットが当たるのは初めてで*1、実際に卒業後のサクラがどんな想いを抱えているのか、メサイアの本当の意味とは何なのか、候補生とは違う「サクラ」としての姿が観れて良かった。これはきっと有賀ではなく、白崎でもなく、第一世代でもなく、加々美いつきでなければ出来なかったことなんだろう。

いつきは依存しなければ生きていけないし、サクラになってからも有賀にめちゃくちゃ依存していて、それが彼の強みなんだけど同時に弱みにもなる。そんな危うさを孕んでいる彼はとても魅力的でハラハラする。すごいキャラクターだなあと思う。メサイアはキャラクターの個がはっきりしているけど、その中でも郡を抜いているなあと今回改めて感じた。

有賀を助けることと引き換えに捕えられて北方へ向かったいつきはこれからどうなるんだろう。

 

雛森・小暮について

悠久で一嶋に「あなたは私です」と言われた小暮。まぁ予想していた通り、小暮は一嶋のクローンだったわけですが。そこからの暴走する小暮。自分が死んでもいくらでも代わりはいる、道具としてただ使い回されているだけ、等々クローンとして実験動物にされていた自分を卑下し、いつ死んでもいいと敢えて危険な戦い方をする。そんな小暮に雛森は「俺の前で死んでもいいなんて二度と言うな」「人が死ぬってことはその存在がなくなるだけじゃなく、その人を想っている人間の心も壊れるんだよ」と声を荒らげる。小暮はまだ雛森のことをちゃんとメサイアだとは思えていないんだろうね。雛森に自分がクローンであることを知っていたのか問う時、雛森の「それがどうした」に激昴するけど、雛森的には「それがどうした(クローンだろうと何だろうと俺のメサイアだから関係ない)」なんだろうけど、小暮にはそれが(こんなに自分が苦しんでいるのにそれだけで終わるなんてこいつは俺のことなんか何も思っていない)になってしまったんだろうなあ。陰で色々小暮のこと心配しているのに、雛森圧倒的に言葉が足りない()

そんな雛森は以前任務に失敗して奈落で5年眠っていた。以前のメサイアは園之人。今回の照る日の杜潜入で園と再会してしまう*2。「ひな」「ゆき」って呼び合うのめちゃめちゃ可愛い…()そんな可愛さと裏腹に(?)園は以前任務に失敗し、捕えられた。サクラは任務に失敗したサクラを救助してはならない。メサイアを除いては。今こうして生きているのはメサイアであった雛森のおかげではなく、敵に魂を売ったから。つまり園は北方の工作員に寝返っていた。雛森が5年眠ることになったのときっと関係があるんだろうし、園はいつきを連れて北方へ渡ったから今後またあるんだろうなあ…。

最後にいつきと御池がチャーチの鉄の掟言ってるところで、「サクラは任務に失敗したサクラを救助してはならない」って言った時雛森が俯くのめちゃくちゃエモかった。

まだお互いに真のメサイアとは言い難い関係の雛森、小暮、そこに園を加えた三角関係(?)は今後どうなっていくのか。そして、園が言っていた「私の真の正体」とは一体何なのか。

 

御池・柚木について

今回の主役。元御神体で柚木に殺されたい御池と、メサイアが元御神体だとは知らず元御神体を殺したい柚木。ついに御池が柚木に自分が神様をやっていたことを明かした。柚木を殺すよう仕向けたのも自分だ、これで殺す理由ができたんだから僕を殺してくれ、と。

2人はお互いにお互いを太陽だと思って生きていた。御池は柚木を見て、「自分の道を自分で拓いていく、キラキラ輝いている、こんな奴が世界を救うことができる」と思っていた。柚木は御池のことを、「絶望の底にいた自分を救ってくれた、新たな名前をくれた、柔道という新しい道を示してくれた神様だ」と思っていた。御池はミコトノリの親免疫細胞を持っており、信者をコントロールできるが、唯一柚木だけにはその力が効かなかった。太陽だった柚木を穢したくなくて、御池は柚木を照る日の杜から追放させようとする。でも柚木はそれを自分が神に捨てられた、と思ってしまう。どんな悪行をしていようが、神のためならいくらだって穢されて良かった、と。

ミコトノリの親細胞を植え付けられたことで元々弱かった御池の臓器はぐちゃぐちゃに食い荒らされ、もう限界が近付いていた。照る日の杜に向かった御池を連れ戻すために戦う柚木はあまりにも致命傷を負った。死を悟った柚木は、自分の臓器を使ってくれと御池に言う。御池は柚木に殺されたかった、自分はもう死ぬんだ、自分が死んで柚木が生き残るんだ、自分の親細胞を柚木に渡し柚木が神になるんだ。そう言い聞かせるが、運命は変わってしまった。未来が見える御池にもその未来は見えなかった。御池は臓器を受け取ることを拒否するが、いつきに「柚木の魂を救えるのはメサイアであるお前だけだ」と言われ、臓器移植を受けることになる。

柚木に殺されたかった御池は柚木とともに生きることになり、御神体を殺したかった柚木は再び神に魂を救われた。

チャーチに来るより前から深い関係性にあったメサイアは2人では卒業できない説がまた濃厚になってしまった。有賀と間宮、白崎と悠里*3、そして御池と柚木。死にたかった御池は、柚木の臓器を抱え柚木を救うために死ねなくなった。柚木のたった1人の神として。

でもきっと傍に柚木がいる、けどいない、という葛藤もあり、今後御池に新しいメサイアが宛てがわれる可能性もあり。これからもしんどい展開になっていくのは間違いないですね…。

 

穂波葉礼について

御神体の穂波は元々御神体候補として子供の頃から御池とともに過ごしていた。穂波にとって御池は憧れで太陽だった。御池は太陽神アマテラス、自分は月の神ツクヨミ。太陽の光を浴びて初めて光ることができる月。太陽である御池がいなくなったことで、自分が代わりの太陽になった。穂波は、人間は神がいなければ生きていけないと信じていた(信じようとしていた?)。自分が人々を救わなければ、という想いが強く人を救うために他の人を傷つけてしまっても仕方ないこととしていた。彼はきっとそれが信念で、彼にとっては何も間違っていなかった。メサイアは、敵はいても完全な悪役はいない。それは今回もそうで、照る日の杜は5係の敵だけど、彼らは彼らの信念に基づいて行動していただけでそれは決して悪役ではなかった。信者だった及川に殺される時「騙そうと思ったことなんて一度もなかった」と穂波は言う。それはきっとその通りで彼はただ人を救いたい一心だったんだろう。

 

演出について

メサイアってその組織ごとに衣装があるけど、今までは割とどの組織も暗めな色で同化してしまってわかりづらい部分もあったかと思うけど、今回は色の対比がすごく綺麗だった。照る日の杜の真っ白の中で1人戦う柚木の黒が映えていた。柚木の傷口を必死に抑える御池の白い袖に赤が見えた。メサイアで白を使うのって多分初めて?だったと思うけど、すごく美しくて儚い景色になっていた。

EDで1人で戦った後の御池の後ろで桜舞い散りながら笑顔の柚木が立っている暗転前の演出がエモすぎてその一瞬だけで泣いた。暁にしろ悠久にしろ、西森さんは最後の一瞬の演出がニクすぎる。その一瞬が頭から離れられなくなる。ずるい。

月詠は鋼のオマージュがとても多かった。まずGロッソに行く時点で鋼を思い出してめちゃくちゃしんどかったし、演出にも鋼を彷彿とさせるところがいくつも出てくるし、結末がしんどいし(笑)明日もメサイア行くの…しんど…行こ…ってなりながら行っていた(笑)月詠は鋼の次くらいに観なきゃ良かった(良い意味で)って思う作品でした。

 

 

 

 

 

「人はどうすれば人を救えるのか」

メサイアの本質でもあり、永遠のテーマでもある。命を救うだけがメサイアではない。魂の救済。それがメサイア

 

 

 

そして舞台はまた映画へと続く。映画では何が明かされるのか。

*1:サポートとして帰ってきていたりはしたけど

*2:一嶋が再会するように仕向けたわけだが

*3:一応この2人はともに卒業出来ているといえば出来ているけども